山里のごちそう

嘉例川の冬支度 〜柿と大根、そしておじいちゃんの名言〜

    「映えるなぁ!」とおじいちゃん絶賛。冬の風物詩、今年も健在。

    冬の足音が少しずつ近づいてきました。先日の早朝、嘉例川の大地には白い霜が降り、草木をうっすらと覆いました。澄みきった冷たい空気の中、地面がきらきらと輝き、秋から冬への移ろいを静かに告げています。

    そんな晩秋の風景の中、嘉例川の冬の風物詩として、地元の皆さんが柿と大根を軒先に吊るしてくださいました。黒い壁を背景に、鮮やかな橙色の柿と真っ白な大根が並ぶ様子は、美しいコントラストを生み出し、どこか懐かしい温かみのある景色を作り出します。

    「これで嘉例川も立派なインスタ映えスポットになったな!」
    作業を終えたおじいちゃんが、満足そうに腕を組みながらつぶやきます。いや、おじいちゃん…確かに映えるけど、それを狙って吊るしたわけじゃないでしょう?

    干し柿作りには、寒さと乾燥が欠かせません。軒先に吊るされた柿は、時間とともに水分が抜け、次第に深い色へと変化していきます。じっくりと寒風にさらされながら、甘みを増し、しっとりとした食感の干し柿へと仕上がります。その味わいは、噛むほどに濃厚な甘さが広がり、自然の恵みを感じさせてくれる逸品です。

    一方、白く長い大根もまた、冬ならではの保存食へと変わっていきます。寒さの中でしっかりと干された大根は、旨味が凝縮され、たくあんや切り干し大根などへと生まれ変わります。食卓に並ぶ頃には、コリコリとした食感と自然な甘みが楽しめる、美味しい冬の味覚になっています。

    「今年の大根はよくできたなあ。うちの孫くらい立派や」
    おばあちゃんの言葉に、「えっ、大根と比べられるの?」と孫が戸惑うも、なんだか誇らしげな顔。確かに、今年の大根は太くて立派だ。でも孫よ、君は漬物にはならないから安心して。

    この光景は、嘉例川の人々にとって当たり前の風景かもしれません。しかし、都会ではなかなか見ることのできない、手作りの保存食を作る昔ながらの知恵と文化が、ここには生き続けています。

    季節の移ろいとともに、地域の人々の暮らしが生み出す冬の風物詩。柿と大根がゆれる軒先の風景を眺めながら、嘉例川の冬はゆっくりと深まっていきます。

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    嘉花さくや子

    嘉花さくや子

    霧島で生まれ霧島で育ち今も霧島です。 嘉例川の祭りの裏方として出没してます。よろしくお願いします。

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